バンコク発の遅延・欠航で請求できるもの|日本の読者向けの正確な話
記事の更新日: 2026-09-17
最高レート JPY · バンコク: 0.2115 — Superrich Thailand — Headquarter Rajdamri 1 · 9月20日 08:58 → 詳細
遅延補償の話は、インターネット上で最も不正確に広まっているものの一つです。「遅延したら600ユーロもらえる」という要約が独り歩きしていますが、日本とタイを行き来する旅行者の大半は対象外です。ここでは、どの便が対象で、どの便が対象外なのかを先に書きます。

EC261が適用される条件
EU規則261(EC261)の適用範囲は2つです。
1. EU/EEA域内の空港を出発する便。この場合、航空会社の国籍は問いません。パリ発でもフランクフルト発でも、どの会社の便でも対象です。
2. EU/EEA域内の空港に到着する便で、EU籍の航空会社が運航するもの。到着側については、EU系キャリアに限られます。
英国は、英国発着の便についてほぼ同内容の制度を独自に持っています。
つまりバンコク発はどうなるか
バンコクはEU域外です。したがって1の条件は使えません。残るのは2だけで、これは「EU籍の航空会社が運航してEUに到着する便」です。
バンコク発の便でEC261の対象になるのは、EU系航空会社に乗ってヨーロッパへ飛ぶ場合だけです。同じバンコク–ヨーロッパ線でも、非EU籍の航空会社なら対象外になります。
そして、バンコク–東京(およびその他の日本の都市)の便は、どちら向きでも対象外です。出発地も到着地もEU域外で、EU籍の航空会社も関係しないからです。ここは例外なく対象外です。
「バンコク発でも請求できる」という書き方をしている情報を見たら、EU系キャリアの話をしているのか、そうでないのかを確かめてください。
対象になる場合の金額
対象範囲内で、かつ遅延の原因が悪天候・航空管制・保安事案といった「特別な事情」ではなく航空会社の責任にある場合、距離に応じた定額の現金補償が発生します。
| 飛行距離 | 補償額 |
|---|---|
| 1,500km以下 | 250ユーロ |
| 1,500〜3,500km | 400ユーロ |
| 3,500km超 | 600ユーロ |
バンコク–ヨーロッパは3,500kmを超えるので、該当すれば600ユーロです。条件は、到着が3時間以上遅れた、欠航が14日前を切って通知された、搭乗を拒否された、のいずれか。航空券広告の値段とは無関係の定額で、払い戻しとは別枠です。
日本には同等の制度がない
ここを正確に書きます。日本には、遅延や欠航に対して航空会社に定額の現金補償を義務づける法制度がありません。EC261に相当するものは存在しません。
日本発着の便が遅れた場合に受けられるのは、各航空会社が自社の規則(運送約款)で定めている範囲の対応です。代替便への振替、払い戻し、状況によっては食事や宿泊の提供。これらは制度上の権利ではなく会社ごとの運用なので、同じ状況でも会社によって扱いが違います。
「請求代行サービス」を使っても、存在しない権利は作れません。対象外の便について代行業者が取れるものはないので、日本–タイ線の遅延で代行業者に依頼する意味はありません。
それでも請求できるもの
制度上の補償がなくても、次は取れることがあります。
航空会社に求めるもの。長時間の遅延なら、食事、通信手段、翌日便になる場合の宿泊と空港への送迎。EUや英国の空港ではこれが制度上の権利として保障されており、それ以外の空港でも多くの航空会社が運用上提供します。自発的に案内されないことが多いので、カウンターで求めてください。断られたら常識的な範囲で自分で手配し、領収書をすべて残します。
海外旅行保険広告の航空機遅延費用特約。日本の保険にはこの特約があり、一定時間以上の遅延で食事代や宿泊代が支払われます。加入時に付いているかどうかは契約次第なので、証券を確認してください。
クレジットカードの付帯保険。国内・海外の航空機遅延費用が付いているカードがあります。ここでも利用付帯か自動付帯かを確認してください。利用付帯なら、その航空券をそのカードで買っていなければ発動しません。多くの遅延補償特約は「航空券をそのカードで決済していること」を条件にしています。
受託手荷物。出てこない、壊れた場合の航空会社の賠償責任はモントリオール条約による上限があり、おおむね1,500SDR前後です。これは立証できた損害に対する上限であって、その額が出るという意味ではありません。到着エリアを離れる前にPIR(事故報告書)を作ってください。
請求のために残すもの
搭乗券、出発案内板の撮影、実際に到着した時刻、可能なら遅延理由の書面、そして自分で払った費用の領収書。これらは後から作れません。空港にいるうちに集めてください。
この記事が要らない人
日本–タイの直行便だけを使う人は、EC261の部分を読む必要がありません。関係がないからです。読むべきは保険とカードの特約の部分だけです。
ヨーロッパ乗り継ぎでタイに来る人は、区間ごとに判断が変わるので、自分の券面の運航会社を確認してください。ヨーロッパの空港を出発する区間があれば、その区間は対象になり得ます。
遅延補償の代行サービスを検討している人へ。対象便であり、自分で航空会社と交渉するつもりがない場合にだけ意味があります。対象外の便では、誰に頼んでも結果は同じです。まず自分の便が対象かどうかを確定させてください。
旅程が崩れたときの現金面の備えは遅延・ロストバゲージ・入院、空港での動き方は空港から市内へにまとめています。